バイオテロへの備えは各方面で求められている。写真はイメージ(写真:AP/アフロ)

(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)

機内で未知の高致死率ウイルスが拡散されたら・・・

 航空機内という密室状態の中で、致死率の高い新型ウイルスが拡散されたら一体どうなるのか?

 乗客乗員が次々と感染し、パイロットも死亡したら墜落という最悪の結果をもたらす可能性があるなか、パイロットやCA(客室乗務員)、それに医師、警察などはどう対応すべきか、何も決められていない。乗務員や地上での対策本部もどうしたらいいのかわからず、人々はパニックに陥ることだろう。このようなバイオテロの懸念を描いた航空映画『非常宣言』が公開された。

 ソン・ガンホとイ・ビョンホンという韓国映画界を代表する俳優の共演ということもあって、すでに韓国内では話題の作品で、カンヌ映画祭にも出品された。

 筆者は、航空評論家と航空映画評論家としてこの映画の劇場用パンフレットで解説を担当し、ウエブサイトでもインタビュー記事が使われている。

 この映画のストーリーは次のようなものである。

 ソウルからホノルルに向かって飛行中の機内で致死率の高い未知のウイルスが拡散され、多くの乗客、CA、それに機長までもが次々と死亡し、墜落の危機に直面する。そこで乗客として搭乗していた元パイロットが操縦をとって代わり、周辺国に緊急着陸を要請し、最後には「非常宣言」を発出する(「非常宣言」とは、飛行機が危機に直面し、通常の飛行が困難になったとき、パイロットが不時着などを要請すること)。ところが・・・。

 筆者は、この映画は新型コロナウイルス感染症の世界的大流行にヒントを得て制作されたのでは、と考えていたが、実際にはそれ以前に構想があったという。現代の世界をまるで予言したかのようで、実にタイムリーな映画といえる。