また、コシヒカリは窒素肥料が多すぎるとタンパク質が多くなって味が悪くなるため、窒素肥料投入を控えた栽培が流行し、これも障害を起こしやすくなった一因とされる(前出『ブランド米開発競争』)。
より根本的な対策は、作付けの時期をずらすこと、あるいは、コシヒカリをやめて、高温に強い作物にすることだ(前出『地球温暖化と農業』、『地球温暖化と日本の農業』農業・食品産業技術総合研究機構、成山堂書店)。コシヒカリは、もともと高温に弱かった。
九州で作付けられている品種は高温に強い。農研機構(正式名称は農業・食品産業技術総合研究機構)の「つきあかり」、宮崎県の「おてんとそだち」、などだ。もともと米は熱帯のものだから、高温に強い品種を開発できることはもっともだ。
温州ミカンとスイートオレンジを交配
ミカンも温州ミカンは高温障害で皮が身からはがれることがある(浮皮という)。けれどもこれも、実を間引く(摘果という)ときに高温障害に遭いにくい実を残すとか、西日が当たりにくくするように周囲の木の枝を巡らせる、木に覆いを被せるといった方法で防ぐことができる(前出『地球温暖化と日本の農業』)。
この場合も根本的な対策は、温帯である中国から渡来した温州ミカンに代えて、高温に強い作物に変えることだ。スイートオレンジとの交配で開発された清美(きよみ)のように、熱帯から来た柑橘類と交配したものは、高温に強い(前出『地球温暖化と日本の農業』)。
清美以外にも、柑橘の品種改良は活発に行われていて、数十種類が市場に出回っている。
さて高温障害があるたびに「地球温暖化のせいで」と言われるが、本当だろうか。後編ではその真偽について考えてみたい。
◎後編「CO2濃度上昇と地球温暖化は農業にはプラスも、目の敵にするだけでいいのか(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73363)」を読む
[参考リンク]
YouTubeページ「杉山大志_キヤノングローバル戦略研究所」
https://www.youtube.com/channel/UCQTBDqu6j3u4GrPPl2HrS3A