「信州のそば粉を使ったら『長野県産そば粉使用』と表示します」
しかし、信州そばが名産となったのは、そばの生育環境が大きく影響している。そばが昼夜の寒暖差の大きく、水はけのよい高冷地を好むことから、長野県で上質なそば粉がとれた。当初は「そばがき」などの団子状にして食していたものが、現在の麺状態の「切りそば」になったのも信州がはじまりとされている。
信州で育まれたそばだからこそ、「信州そば」としての価値があるはずだ。そうであるとするなら、むしろ長野県で栽培、収穫されたそば粉を使っている場合は、外国産とどう差別化するのか。そう質問した時の全国乾麺協同組合連合会の答えは、あまりにシュールだった。
「信州で穫れたそば粉を使った場合は『長野県産そば粉使用』と表示します。その表示がないものは、長野県産のそば粉は使っていないと理解してください。それもだいたいが外国産でまず間違いない」
こうした事実をどれだけの日本人が知っているだろうか。「信州そば」といいながら、中国やロシア産のそばの香りを楽しむ。それを国産の香りと味として錯覚する。
さすがにファミリーマートでは『信州そば』のPB販売はなくなったようだ。かわりに同じ製造元の『そば』と表示された乾麺が置かれている。そのパッケージには小さく「自社製粉のそば粉を使用し、信州戸隠の水で仕上げました」とあるのが意地らしい。
2022年も年の瀬。年越しそばを食べて過ごす日本の風習を大切にしている人も少なくない。ただ、そこに「○○そば」とあっても、それが名産や原産地を示すものでないことは覚えておいたほうがいい。