ただ、同社ではここ数年、小諸市に自社畑を設けてそばを栽培しているようだが、1日6万人の客(同社HPによる)を相手に、小諸のそばを提供しているとは考えにくい。それどころか、国産のそば粉を使用しているのかも定かでない。
それで看板に『小諸そば』と掲げるのだから、よく「不当景品類及び不当表示防止法」違反にひっかからないものだと、ずっと疑問に思っている。
温かい「もりそば」とは…
それと、そばに関して理不尽なことがもうひとつ。これも都内のそば屋で最近、体験したことだ。「大もり」「二枚盛り」というメニューがあったので注文したら、店員が「温かいそばですか、冷たいそばですか」と聞き返してきた。
「もり」「もりそば」といえば、ゆでたそばを水にさらしてせいろやざるに盛ったそばのことをいう。老舗の店で「大もり」といえば、もりそばの「大」のことだ。二枚といえばせいろが2枚だ。「かけそば」とは違う。いうなれば、この店員は刺身をオーダーされたのに、「生のままですか、それとも火を通しますか」と客に確認するのと同じことだ。だからあえて「もり」と答えると、「うちは二枚盛りのかけそばもある。冷たいか、温かいか、はっきりしろ」とくってかかってきた。
そこで「二枚盛りのかけそば」というから興味が湧いてどんなものか尋ねると、2杯のかけそばのことだというから、心底呆れてしまった。
「食育」という言葉がある。子どもの肥満が社会問題化してきて2000年代から使われるようになったが、本来は、どんなものをどれだけ、どんな風にバランスよく食べたら、健康に過ごせるのか、食事の摂り方の教育のことを意味したはずだった。それを自治体が「地産地消」とごっちゃにしてしまったり、ナイフやフォークの使い方といった食事のマナー教育とはき違えたりして、とっちらかってしまったところがある。
それでも、日本人であれば、日本の古くからの食文化を後世に正しく残していきたいと考える。それを含めて「食育」というのなら、これらのそば屋は日本の食文化を殺しているに等しい。
ところが、ここまで講釈を垂れたはいいが、私を含めた日本の消費者がどうしても解決できない、根本的な問題がそばには横たわる。