そばの自給率は2割程度、大半は中国から輸入
そば、といえば日本固有の食文化であればこそ、国内で自給されていると思われがちだが、そうではない。食料自給率が38%(2021年/カロリーベース)の日本において、そばの自給率は平成に入ってからほぼ2割を上回る程度で推移している。あとは輸入に頼っていることになるが、その最大の輸入相手国が中国だ。輸入のおよそ8割を中国が占め、あとは米国、ロシアと続く。ウクライナに侵攻したロシアは、世界最大のそばの生産国でもある。
因みに、ロシアやウクライナでもそばを食べる。カーシャというそばの実のいわばお粥だが、私がウクライナで食べたそれは、お粥というより炊き込みに近く、付け合わせのように皿に盛る。そばの実の香りが引き立って、とても気に入っていた。
そうなると、日本人が消費するそばの約8割は海外産である。ところが、この海外産のそばが「信州そば」にすら化けてしまう。
たとえば、私がかつて取材したところでは、大手コンビニエンスストア「ファミリーマート」のプライベートブランド(PB)に『信州そば』と商品表示された乾麺があった。製造元は、信州でも「戸隠そば」で知られる長野県戸隠の製麺会社だった。そこで同社に問い合わせると、「当該の商品は中国産、もしくはロシア産のそば粉を使っています」と即答されたことがある。
それが許される根拠となるのが、全国乾麺協同組合連合会が示したガイドラインだった。そこには食品表示法の解釈から、長野県内で製麺された商品についてはすべて「信州そば」と表示していいとされているのだ。
これは「讃岐うどん」でも同じだった。香川県の小麦粉をつかったわけではないが、製麺した場所、麺に加工している産地名を香川県内に限定して表示が許される。
確かに、小麦も自給率が15%(2020年)の日本において、香川県の小麦だけで「讃岐うどん」を全国規模で賄うのは現実的に無理だ。
さらには、公正取引委員会と消費者庁が定めた「生めん類の表示に関する公正競争規約」にも定義がある。そこには「讃岐うどん」は「香川県内で製造されたもの」とある。それと同様に、生めんの「信州そば」の表示についても、やはり「長野県内で製造されたもの」とあるだけで、そば粉の産地についての規定はない。それで中国産のそば粉でも「信州そば」として販売されているのだ。