(山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)
12月7日から3日間にわたり、中国の習近平国家主席がサウジアラビアのリヤドを訪問。サルマン国王とその息子で同国の実質的権限を握るムハンマド皇太子と面談した。
サウジアラビアにとって中国は最大の石油輸出相手だ。石油の安定的供給への見返りに、中国からのインフラ投資、技術移転などの取り決めがなされた。
歴史的な「第1回 中国・アラブ首脳サミット」
サウジアラビアだけでなく、湾岸協力会議(GCC)と呼ばれるクウェート、カタール、UAE、バーレーン、オマーンの首脳、さらにエジプトなどその他のアラブ諸国の首脳とも会談した。
「中国・アラブ首脳サミット」の歴史的な第1回がリヤドで開催されたのだ。中国とアラブ諸国という2つの巨大経済圏が、関係を一気に強めることになった。
このことは、国際政治やビジネスにとって大きな影響があることは間違いない。
かつては大きかったアラブ諸国での米中格差
中国のアラブ諸国におけるプレゼンスは、歴史的に見れば、必ずしも大きいとはいえない。
湾岸アラブ諸国は、英国をはじめとしたヨーロッパの影響力を長く受けてきた。また、第2次大戦後は米国が石油メジャーなどを通じて、湾岸アラブ諸国に大きな影響力を行使してきたからだ。
私は、1990年代にサウジアラビアのリヤドにある日本大使館に勤務していた。米国大使館は、外交官の数が多い巨大大使館であった。大使館員はアラビア語ができる優秀な外交官が揃っていた。
一方で、同時期のリヤドの中国大使館にもアラビア語の堪能な優秀な外交官はいた。しかし、その規模は、米国大使館よりもはるかに小さかった。中国の対湾岸アラブ諸国外交は、脆弱の感をぬぐえなかった。
中国は、イスラム教徒が多い新疆ウイグル自治区問題を抱えているため、イスラム圏と特別に緊密になりにくい土壌もあった。
中国とアラブ諸国は緊密度が強いとまでは言えなかった。アラブ諸国での米中格差は大きかった。