(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
韓国の尹錫悦大統領が、前大統領・文在寅氏とその支持勢力の手前勝手な振る舞いを追及し始めている。これを象徴する出来事が、12月に入って2つあった。
ひとつは、文在寅氏が擁護する民主労総(全国民主労働組合総連盟)の貨物連帯(公共運輸労組貨物連帯本部)が16日間にわたって続けていたストに、12月9日、「法と原則」を全面に押し出し、終止符を打たせたことだ。
もうひとつは、西海(日本名「黄海」)における北朝鮮軍による韓国公務員射殺事件に関連して、これまた「法と原則」の下に、文前政権の国家安保室長・徐薫(ソ・フン)氏を12月3日に逮捕した一件だ。
西海事件の捜査で徐薫氏が拘束されると、文在寅氏と「共に民主党」は危機感を一気に募らせた。そして「次は月城原発捜査、全方位的な政治報復」だとして、親文系勢力を再結集し、対抗する動きに出始めた。
結束力が「親文系」の強み
親文系の強みは団結力である。文在寅氏やその側近が批判されたり、捜査の対象となると、親文系の人々はこれをもみ消すために、結束力を強めてきた。そして「ネロナンブル(自分たちがすればラブ・ロマンス、他人がすれば不倫)という韓国語で有名になった「二重基準」で自らを正当化し、苦境を乗り切ってきた。
逆に保守系は権力闘争に明け暮れ、まとまりがなく、親文系勢力に押され気味だった。
西海事件に関しての検察の攻勢に対し、文在寅氏と側近及び民主党では、改めて親文系を再結集し、反撃に乗り出そうとしている。
5月に大統領に就任した尹錫悦氏は、これまで検察力を動員し、文在寅政権がもみ消してきた不正を追及してきた。また、文在寅氏が取ってきた北朝鮮の核ミサイル開発や挑発を黙認する政策や、労組を優遇し企業経営を規制する経済社会政策の負の遺産の解消に尽力してきた。