中国・北京の新型コロナウイルス検査場。設置されたバリケードが倒されている(資料写真、2022年12月14日、写真:AP/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 習近平政権は12月に入り明確に動態清零(ゼロコロナ政策)からウィズコロナ政策に転換した。11月下旬に一気に広がった「白紙革命」「反ゼロコロナ抗議」の勢いに習近平政権が譲歩したという見方が強い。

 だがこれを、民衆の抵抗運動の勝利だ、とか、いよいよ中国経済の復活だ、と諸手(もろて)を挙げて喜ぶ状況ではないようだ。

 今、あまり予防効果がないという中国製ワクチンしか接種できていない中国人民の間で感染が急拡大している。さらに今後、クリスマス、元旦、春節休みに伴って人民の大移動が起きれば、全国同時に新型コロナアウトブレイクに見舞われる可能性も出てきた。そうなれば、医療システムの崩壊が起こり、弱毒性といわれるオミクロン株でも、高齢者、基礎疾患をもつ人々は生命の危機に直面するかもしれない。

人々が歓喜の声をあげて封鎖地区の外に

 12月7日、国務院の聯合防疫コントロールメカニズム当局は「新十条」と呼ばれるゼロコロナ政策緩和の10項目を打ち出した。

 簡単に内容を列挙すると次の通りである。

(1)封鎖する場合は正確にハイリスク地域に絞って勝手に拡大しない。いきなりロックダウンはしない。
(2)PCR検査対象を縮小し少しずつ減らしていく。病院、養老院、託児所、小中学校など特殊な場所以外はPCR検査陰性証明提示を要求しない。
(3)無症状陽性者、軽症者は家庭で自主隔離か集中隔離施設かを自分で選択。
(4)ハイリスク地域封鎖は、5日間、新規感染者が出なければ解除。
(5)薬局は勝手に営業をやめない。薬の購入に勝手に制限を設けない。
(6)高齢者のワクチン接種を加速。
(7)基礎疾患者に対する分類管理。
(8)非ハイリスク地域の人的流動、生産・営業を停止してはならない。社会の正常運転、基本的生活物資、ライフライン供給など保障。
(9)消防車両の通り道やコミュニティのゲートなどを封鎖しない。
(10)学校の防疫工作の最適化。感染の起きていない学校の正常な開放、など。