米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機。我が国で同国発の危機に真っ先にさらされたのが、巨額投資マネーを海外から呼び込み、急激な業容拡大を図った新興の不動産開発業者(デベロッパー)、そして彼らと連携した総合建設会社(ゼネコン)だ。
実際にいくつかの上場企業が経営破綻に追い込まれたのは記憶に新しい。にわかバブルの崩壊とともに、彼らが扱った土地やマンションの価格が下落を始め、日本経済は急激に冷え込む気配を見せている。
ここ数年盛り上がったミニバブルは、意外な分野にも広がっていた。サブプライムローン問題の余波が、今、日本の介護事業に暗い影を落とし始めている。近い将来、「老人難民」が社会問題化するとの物騒な予想さえ、一部関係者の間でささやかれ始めているのだ。
豪華ゴルフ場と老人ホームの共通点
1980年代後半、日本は未曾有のバブル景気にわいた。この際、バブル紳士たちのステータスシンボルとして、豪華ゴルフ場の会員権がもてはやされた。既存の有名クラブの会員権が高値で売買されたほか、開業前のゴルフ場会員権さえも「確実に儲かる商品」としてアブク銭の受け皿になった。
開発業者は銀行やノンバンクから多額の融資を受けたほか、顧客からも「預かり金」という名目で多額のカネを集めた。だが、バブル景気崩壊で景気が冷え込み、投機目的のゴルフブームは終焉。結果として、ゴルフ場の開発や運営費を「預かり金」から捻出していた多数の業者が破綻に追い込まれた。
この図式が、なんと最近の介護業界の一部にも当てはまるのだ。新聞に入ってくる折り込みチラシ、あるいはテレビのスポットCMで、リゾートホテルのような豪華老人ホームの宣伝を目にしたことはないだろうか。実は、十数年前に行き詰まった豪華ゴルフ場のビジネスモデルと、最近話題となった豪華老人ホームの経営手法が不気味なほど似通っているのだ。
実は数千万円の入居金ではすまない
時計の針を今から4~5年前に戻そう。この時期は、地価が底値を打ったとされるタイミング。折しも小泉元首相が提唱する構造改革の真っただ中。大幅に削減された公共事業に代わる新たな収益源として、ゼネコンやデベロッパーは地価の下がった大都市の中心部に積極的にマンション建設を進めた。「都心回帰」という現象だ。