「外国人観光客の消費5兆円」など総合経済対策を閣議決定した岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

インバウンド復活も、実態はコロナ前の8割減

 10月に水際制限が事実上撤廃されて以降、外国人の訪日旅行(インバウンド)が急激に戻り始めている。11月16日に日本政府観光局(JNTO)が発表した10月の訪日客は49万8600人と、前月(20万6500人)と比べて2倍以上の伸びとなった。上位は次の通り。

(1)韓国/12万2900人
(2)米国/5万3200人
(3)香港/3万6200人
(4)台湾/3万5000人
(5)タイ/3万4100人

 コロナ前に断トツだった中国は、ゼロコロナ政策を維持しているため2万1500人にとどまった。ちなみに、ウクライナ侵攻で各国から経済制裁を受けているロシアからは1600人が訪れている。

水際対策の大幅緩和で訪日外国人観光客が急増しているが…(写真:ロイター/アフロ)

 メディアのなかには「訪日客、前年同月比22.5倍」と報じたところもあった。爆発的な増え方を印象づけるタイトルだが、2021年はコロナ禍の影響(9月末まで緊急事態宣言)で10月の訪日客が約2万2000人しかいなかったため、そんな時期と比較しても意味がない。

 コロナ前の2019年10月の訪日客は約250万人だったから、その時点との比較では8割減というのが実態である。「爆買いシーン」の様子を含め、インバウンド景気が復活するかのような印象を与える報道は先走り過ぎている。