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日本は世界の投資を呼び込めるか(写真:アフロ)

(文:矢嶋康次)

歴史的な円安に見舞われた日本だが、電化製品はどんどん売れても、投資はなかなか集まらない。対して米国は、景気後退期にこそ投資が集まり、景気回復の原動力となる。安いから買われる米国と、安くても買われない日本の違いは深刻だ。

 最近、海外旅行に行った人の話を聞くと金銭感覚がおかしくなる。家族4人でハワイに1週間滞在したら旅行代金が200万円を超えたという。とびきり豪華なホテルに泊まったわけでも、高級ランチや高級ディナーを楽しんだわけでもないのに、宿泊費や食事代がバカ高い。メディアの「安い日本」特集では、海外は物価も人件費も高いので、海外でアルバイトをしたほうがお金は貯まるし、為替でも有利という内容を伝えている。

 世界の物価上昇をよそに日本は20~30年、物価が上がらなかった。実質実効為替レートは50年ぶりの低水準で、世界から見れば日本は歴史的に「安い国」である。

安いから買われる米国

 日本人として、「安い日本」というのは、あまりいい感じがしない。しかし、最悪なのは、安いのに世界から見向きもされない事態である。

 たとえば米国では、「安い米国」に投資家やビジネスマンが殺到する。毎年この時期は来年の世界経済について経営者や投資家とミーティングを持つ。足元のインフレがいつまで続くのかとともに、来年予想されている米国の景気後退がどの程度深刻になるのかが議論となる。

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