世界に例がない複雑で脆弱な地層を抜けるトンネル
図1のように、南海トラフ地震で震度6弱から7の揺れが予想される激震地帯をリニアは走る。
品川―名古屋区間286kmのうち、トンネルが約86パーセントを占める。山梨県早川町から静岡県を通過して長野県大鹿村を結ぶ南アルプストンネル(長さ25km)、長野県飯田市から岐阜県中津川市まで続く中央アルプストンネル(長さ23km)などがある。
山岳地を抜けるトンネルは地震に強いと考えられてきたが、被害もだんだん報告されるようになった。上越新幹線の魚沼トンネル(長さ8.6km)は、新潟県中越地震(2004年)で、トンネルの天井部分(厚さ50cm)が長さ約5mにわたって崩落し、トンネル内の3か所で路盤コンクリートが垂直方向に最大で25cm浮き上がった。
リニアのトンネルは、地質条件が悪い場所を通るので、さらにリスクが高まる恐れがある(図2)。
「フィリピン海プレートの沈み込みにより南アルプスの地層は大きく重なるように曲がり隆起している。その隆起速度は、年間4mmで日本最大であり、世界的に見ても他に例がない」「他に例がないほど複雑で脆弱な地層が高い確率で点在する場所」(静岡県の資料*3)。
地殻変動の向きは、トンネル周辺では地震時には反転し、一気に20センチ近く沈むところもあると予測されている。
*3 静岡県 南アルプストンネル工事の特殊性について(https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/documents/minamiarupusunotokusyusei1217-3.pdf)