(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
韓国で新たな不買運動が始まった。今回はSPCグループがその対象だ。
同グループはソウルに拠点を置く食品会社で、主にパンや菓子を製造している。傘下には韓国最大のパンチェーン店「パリバケット」やワンランク上のパンチェーン店「パリクロワッサン」、日本でもおなじみの「サーティワンアイスクリーム」「シェイク・シャック」「カフェパスクッチ」などがある。
2022年10月15日、SPC系列会社であるSPL工場で23歳の女性が死亡した。サンドイッチソースを作る撹拌機にエプロンが巻き込まれたそうだ。パン職人になることが夢だった彼女は、皮肉にもパンを製造する機械に命を絶たれてしまった。
彼女が巻き込まれた撹拌機には、蓋を開けると機械が自動的に止まる自動防護装置がついていなかった。
同月7日にも別の従業員の手が20分も機械にはさまれる事故が起こったばかりで、工場側は負傷した従業員を病院に連れて行かずに社内の保健室で手当した。病院に連れて行かなかった理由は、その従業員が3カ月の派遣職だったからだ。
同工場の工場災害事故資料によると、死亡した女性と類似したはさまれ事故は過去5年間に少なくとも15回発生していた。度重なる事故の発生を不安に思った従業員たちが安全フェンスの設置などを工場側に要求するも、工場側が聞き入れることはなかったという。
一人の命が失われたことは大問題だし、あってはならないことだが、単なる死亡事故であれば、韓国国民がSPCの不買運動に乗り出すことはなかっただろう。
彼らがSPCに怒りを覚えた理由は次の問題だった。