ロシアと欧州を繋ぐパイプライン「ノルドストリーム1」(ドイツ・ルブミンで2022年3月に撮影、写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 ノルウェーの調査企業ライスタッド・エネジーによれば、米国の液化天然ガス(LNG)の今年(2022年)1~9月の輸出量は前年比13%増の6190万トンとなった。

 欧州向けの輸出が急増した(前年比2.6倍の3510万トン)ことから、昨年首位の豪州(6060万トン)、同2位のカタール(6010万トン)を上回り、米国は史上初めて世界一のLNG輸出国になる可能性が高まっている。

 バイデン大統領は今年3月、「欧州向けのLNG輸出を前年比1100万トン増加させる」と表明していたが、1~9月だけで前年に比べて2160万トン増加し、公約ベースを既に大きく上回っている。

「ノルドストリーム」に前例のない損傷

 国際エネルギー機関(IEA)によれば、欧州がロシアからパイプラインで輸入する天然ガスは今年、前年比45%減の800億立方メートル(4780万トン)となる。米国産LNGの増加分がロシア産パイプラインガスの減少分の半分を補っている構図だ。

 欧州の天然ガス輸入に占めるロシア産のシェアは、昨年の4割から足元では9%まで低下しており、「脱ロシア化」はさらに進む可能性が高い。9月27日、ロシア産天然ガスをバルト海経由で欧州に輸送する海底パイプライン「ノルドストリーム」に前例のない損傷が生じたからだ。損傷は「ノルドストリーム1」で1カ所、「ノルドストリ-ム2」で3カ所確認されている。