(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は9月7日、1バレル=81ドル台に急落し、8カ月ぶりの安値となった。供給面の不安がくすぶっているものの、各国の中央銀行による強力な金融引き締めや中国のロックダウンなどが需要懸念を高め、相場の押し下げ要因となっている。原油価格は過去3カ月で20%下落している。

OPECプラスが「日量10万バレルの減産」決定

 このような状況下でOPECとロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは、9月5日に閣僚級会議を開催した。サウジアラビアのアブドラアジズ・エネルギー相が8月下旬に1年以上ぶりの減産を示唆していたことから、市場の関心を集めていた。

 OPECプラスの決定は「10月から生産目標を日量10万バレル減らす」というものだった。原油価格の引き下げを求めるバイデン大統領の求めに応じて9月から増産した分(日量10万バレル)を帳消しにした形だ。

 米国では11月の中間選挙に向けて、インフレ対策が争点の1つとなっている。米国のガソリン価格は6月中旬に史上最高値を記録した(1ガロン=5ドル超え)が、直近ではロシアのウクライナ侵攻前の水準に戻りつつある。そのせいだろうか、米国政府はOPECプラスの決定に不満の意を示すことはなかった。

「日量10万バレルの減産」は象徴的な意味合いが強いが、注目すべきはOPECプラスが「生産を調整するために次回10月5日の会合までにいつでも会合を開催することができる」ことに合意したことだ。市場関係者は「OPECプラスが価格注視の姿勢に戻ったシグナルだ」と受け止めている。