臨時国会で所信表明演説に臨む岸田首相(写真:UPI/アフロ)

 10月3日に行われた第210臨時国会衆院本会議の所信表明演説で、岸田文雄首相は個人のリスキリングの支援に5年で1兆円を投じると表明。年功序列的な職能給からジョブ型の職務給への移行と、リスキリングの支援姿勢を打ち出した。

 リスキリングとは、新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと。海外では、デジタル化が進む中で技術的失業(Technological Unemployment)を未然に防ぎ、労働移動を実現するための解決策としてリスキリングが着目されてきた。日本でも、岸田政権は「企業間、産業間での円滑な労働移動」を目指すと表明している。

 大企業では、業務の一環として新たな技能を習得するためのリスキリングの取り組みを導入するところも出始めているが、日本の99.7%の会社が中小企業であることを考えれば、現時点で会社にリスキリングの制度が整っていない場合が多いのではないか。特に、就業時間中にリスキリングを行うための時間確保がままならず、帰宅後や週末に時間を捻出しないといけないという声を耳にする。

 リスキリングは就業時間中に行うべき「業務」だが、どのように就業時間中に実施すればいいのか。『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』を上梓したジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事、後藤宗明氏のやり方を見てみよう。

(後藤 宗明:ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事 )

(1)国や自治体の制度を利用

 まだ全国レベルで充実しているとは言い難い状況ですが、国や自治体がリスキリングのための制度を拡充し始めています。

 例えば、広島県は企業へのリスキリング支援策の第1弾として、ITパスポート取得支援補助金として対策講座を受講して試験に合格した従業員1人あたり2万円の補助を開始しました。また経営者向けに、リスキリングを導入していくための研修プログラムも開始しています。

 既に会社がこういった制度を活用している場合はその機会を利用し、まだそういった試みをしていない場合は自治体に問い合わせをし、制度がない場合は依頼を出してみてください。

 特に県内企業の事業が縮小均衡し、法人税の徴収額が減少していくことは、自治体にとっても死活問題となります。デジタルを活用した生産性向上が見込めるリスキリング施策は、どこの自治体も取り組まなくてはいけない待ったなしの状況となっていますので、前向きに検討してもらえるはずです。

(2)無料セミナー/ウェビナーの利用

 先進的なテクノロジーを扱っているスタートアップなどは、そのサービスの概要や使い方を紹介する無料のセミナーやウェビナー(オンライン上で実施するセミナー)を頻繁に行っています。

 例えば、AI、ブロックチェーン、アドテク、HRテック等、さまざまなテーマで毎日のように開催されています。

 そういった無料の機会を活用すると、テクノロジーの活用でどのように自分の業務が変わるのか、自社では利用されていないデジタル技術にどのようなチャンスがあるのか等についてのヒントがたくさんもらえます。

 内容のレベルによっては、聞いたこともないような専門用語やデジタル先進国で注目されている最新手法などについて知る機会もありますので、ご自身の、そしてチームや会社のリスキリングを進めていく上でとても有効なリソースです。