激務で責任が重い割に看護師の給料は安く、どこの病院も看護師確保に苦労している。亀田グループでは、看護師確保の一環として奨学金制度を設け、亀田医療大学卒業後、大学の附属病院で数年働くことを条件に奨学金支払いを免除する仕組みを作っている。

「この奨学金免除の制度は看護医療学部のある慶応大学などでも設けられています。亀田医療大学の応募者を増やす方法としては、奨学金の増額や、免除までの勤続期間の短縮といった奨学金制度の一層の充実が必要。ところが隆明理事長の長男で亀田総合病院の病院長を務める俊明氏は、奨学金免除の仕組み自体に気乗りしない様子で“出身看護師の奨学金を免除するくらいなら、その金でよそから経験ある看護師を採って来た方がいい”と周囲に話しているそうです。

 鴨川の田舎に経験を積んだベテラン看護師が大勢来てくれることはあり得ないのに、若くて医療現場をよく知らない院長はそれがわからない。

 医療大学内部では“いっそのこと来年度入試から学科試験をなくして応募者全員を無試験入学させたらどうか”という話まで一時、ささやかれていました」(前出同)

すっかり薄れた「患者様のために」の理念

 亀田医療大学の応募者をどう増やしていくかは理事長ファミリーと亀田グループにとって死活問題。折しも、来年、亀田医療大学は創設10年目を迎える。

 そこで亀田側は、創設10周年事業として、来年度については入学試験の受験料と入学金を免除することを決定。募集要項にこう書いた。

「亀田医療大学は、がんばる受験生を応援します!」「令和5(2023)年度入学試験の入学金・受験料が0円」

 免除されるのは入学金30万円と、受験料3万円の合計33万円。募集要項によると、入学金については「一旦入学金を納入していただいた後に授業料等と相殺」するという。これにより、来年度は、1年次の支払額が例年の186万円(入学手続き時に113万円と後期に75万円)から30万円が免除され、156万円になる。

亀田医療大学「募集要項」の表紙

 募集要項は、今回の事業の目的を「看護を志す学部受験生の経済的負担軽減、および進学の機会確保を図る」ことにあるとしているが、亀田のある医師は「今年度の大幅な応募者の定員割れと、相次ぐ看護師の退職が背景にあるのは確実」として、こう語る。

「亀田の給料は、都心の大病院に比べると安いです。それでも、これまでは『患者様のために』という理念に共感して多くの看護師が集まり、医師も亀田で腕を磨きたいと喜んで亀田で働いてきた経緯があります。ところが隆明理事長親子の体制になってからは、患者様のためという理念はすっかり影を潜め、収益を増やすため、とにかく手術件数を増やせの一点張り。これにより現場の志気は著しく低下しており、今後も退職者が続くのは避けられそうにありません」

 今年7月12日には、千葉県・勝浦市の現職市長・土屋元氏が亀田で胸部動脈瘤のカテーテル手術中に急死する事件が発生し、内部では医療事故の可能性も取り沙汰されているという。

 名門・亀田はどこに向かうのか。