(長谷川 学:ジャーナリスト)
千葉県・鴨川の亀田総合病院(亀田隆明院長)といえば、大学病院並みの施設を誇る民間病院の雄で、上皇陛下の心臓手術で有名な天野篤・順天堂大学医学部心臓血管外科特任教授も腕を磨いた病院としても知られる。
その名門病院を要する亀田グループが揺れている。いわゆる「お家騒動」だ。
四兄弟の中での確執
亀田グループは、亀田総合病院を中核とする医療法人鉄蕉会、学校法人鉄蕉館などで形成されているが、現在、グループの“ドン”として君臨するのが医療法人鉄蕉会理事長の亀田隆明氏である。
亀田総合病院は、隆明理事長の祖父・亀田俊雄氏が設立した有限会社亀田病院が前身。その後、俊雄氏の息子・俊孝氏が夫人の典子氏と二人三脚で一大医療グループに成長させてきた。その俊孝・典子夫妻には4人の息子が生まれたが、それぞれが医師となり、亀田グループの要職に就いた。現在のドン・隆明氏は次男である。
だが巨大化した亀田グループの医療面と介護事業面を支えていたのは、双子の三男・信介氏と四男・省吾氏だった。
ところが、次第に隆明氏の専横が露わになる。そして一昨年と昨年、亀田グループの両輪だったリーダーの亀田信介、省吾の双子が事実上のクーデターによって追放されてしまったのだ。一連の騒動とそれによって引き起こされた問題について、筆者は月刊情報誌『FACTA』などで報じてきたが、多くのメディアは黙殺したままだ。亀田一族の内紛程度に捉えているのかもしれない。
だが、クーデター以降、グループの医療事業も揺らいできている。県の基幹災害拠点病院にも指定される医療機関のゴタゴタは、地域医療にとっても由々しき時代である。