(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
2022年7月16日に駐日大韓民国大使として着任した尹徳敏(ユン・ドクミン)氏の発言が、韓国内で物議を醸している。尹大使は2022年8月8日に行われた東京特派員らとの赴任後初の懇談会で、「日本企業の資産現金化は凍結されるべきだ」と発言したからだ。
「現金化されれば、恐らく韓国企業と日本企業の間で数十兆ウォン、数百兆ウォン(数兆円から数十兆円)に上るビジネスチャンスが吹き飛ぶ可能性がある」というのが、彼が現金化を反対する理由だ。
「現金化すれば、日本が報復に乗り出して韓日企業が莫大な被害を被る」「被害者が十分に賠償を受けられる資金が準備できるかどうかも疑問だ」とも述べた。
尹大使が指摘する“報復”とは、2019年8月に日本政府が韓国に対して行った、いわゆる「ホワイト国外し」のような措置のことを指しているのだろう。3年が経ち、政権が変わった今でも、この措置が韓国には相当痛手になっているようだ。
実際、8月6日に開催されたカンボジアでの日韓外相会談の場で、朴振(パク・ジン)外相は林外相に「韓国が関係改善のために望ましい解決策を探す過程で、日本が輸出統制撤回を通じて誠意ある姿勢を見せる必要がある」と要求している。
ホワイト国から除外した後は「脱日本に成功した」などと虚勢を張っていた韓国だったが、結局は日本に頼らざるを得ないのが現状だ。
話を戻そう。現金化に反対する尹大使の発言に対して、韓国国民からは「いったい、どちらの味方なんだ」「土着倭寇を駐日大使に内定したんだ……。これが韓国を代表する外交の第一線に立った人の発言だということが信じられない」と、怒りを露わにする声が聞こえるようになった。
しかし、尹大使の意見に賛成する国民も少なからず存在する。彼らは「大使の発言は正しい。現金化すれば大きな変化をもたらしかねない。方法を変えるべきだ」と、いくぶん冷静である。ただし「自国内で解決すべきだ」という声はない。