7月19日、ソウルの大統領府を訪れた米国のイエレン財務長官と会談する尹錫悦大統領(写真:AP/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 1980年代半ば~1990年代半ば生まれのミレニアル世代と、1990年代半ば~2010年生まれのZ世代とを合わせて、韓国では「MZ世代」と呼ぶことが多い。現在で言えば、主に20代・30代の若者たちだ。

 このMZ世代の中の分断と対立が、いま韓国で極めて深刻な問題となっている。

 若者の分断で最も深刻なのが、所得、資産格差による分断である。

ごく一部の富める若者と大多数の貧しい若者

 延世大学経済学部の成大胤(ソン・テユン)教授は「現在の青年世帯の中でも十分な所得を安定的に得られる職についている集団とそうでない集団の間の格差は大きい。十分な所得の安定した職がないのに大規模負債を抱えた青年が相当な問題に直面している」と指摘している。

 大企業に就職して高い所得を手にし、資産を増やす機会に恵まれた若者は少ない。こうした機会に恵まれない多くの若者は、少しでも所得を増やそうと、ありったけの資金や時には借金して得た資金を元手に不動産や株式、仮想通貨など高リスクな投資にのめりこんだが、彼らの多くは今、大きな損失を被っている。加えて最近の金利の急上昇で借金の返済が不能になり、個人再生手続きの申請が急増しているという。

 このようにMZ世代の中で、大多数を占める所得の低い層が、経済的に追い詰められている状態にあり、高所得層との対立が生じている。

 またこの20代・30代の人々の間の対立は、「性差別」への不満に波及している。

 最近、韓国の大学ではフェミニズムが勢力を伸ばし、学生会の中枢に躍り出て、「性差別・性暴力の防止」に取り組んでいる。この風潮に対し、20代の男性の間には、権力が男性を“逆差別”しているとの不満が高まっている。MZ世代の中で、性による分断と対立が深まっているのだ。

 さらに若者たちの間の分断・対立ということで言えば、政治的対立も、日本では考えられないほど激化しており、それは20代・30代の恋愛関係に波及している。

 韓国政界では文在寅政権時代に、「積弊の清算」(過去の保守政権の成果を否定し、過ちを糾弾する動き)が進められたことによって保守vs革新の血みどろの戦いが展開された。この過程で、李明博、朴槿恵の両元大統領をはじめ、多くの政権幹部が逮捕・投獄される事態になった。今年3月の大統領選挙も不正やスキャンダルをめぐる対立に終始し、保革双方で相手陣営に対する嫌悪感が高揚した。こうした政治的対立はお互いの政治信条の違いを受け付けないほどの感情的な対立を生みだしてしまった。

 悲惨なのは、その感情的対立が恋愛にまで及んでしまっていることだ。20代・30代の若者は、相手が自分とは異なる政治信条を持っている場合、その嫌悪感が恋愛感情をも上回ることが多くなっているという。政治信条のお陰で恋愛関係に至らない若者が増えているというのだ。