人種差別主義者の象徴の一つになったリー将軍像(写真:AP/アフロ)

 夫の海外赴任に同行してアメリカに移住した彼女は、全米48州を巡る旅に出た。そして、平凡な観光名所から、次第に誰も知らない辺境の地へと踏み込んでいく。砂漠の中に忽然と現れる朽ち果てたゴーストタウン、ネイティブ・アメリカンの居留地、迫害される黒人の歴史が展示される博物館、NPOの活動を通して接した各地の貧困層の人たちが口にする想像を絶する過酷で屈辱的な生活──。はたして、アメリカという国は、本当に裕福な先進国と言えるのだろうか。

辺境の国アメリカを旅する 絶望と希望の大地へ』(明石書店)を上梓した、臨床心理士の鈴木晶子氏に話を聞いた。(聞き手:奥山 裕子、シード・プランニング研究員)

※記事の最後に鈴木晶子さんの動画インタビューが掲載されています。是非ご覧下さい。

──アメリカ中をどのように旅したのか、鈴木さんが日本で関わってきた活動も含めて教えて下さい。

鈴木晶子氏(以下、鈴木):20年ほど前から、生活困窮者をはじめ、さまざまな状況に置かれた方々を支援する活動をしてきました。

 その後、夫の海外赴任に同行してアメリカに行ったタイミングが、ちょうどトランプ大統領が就任した2017年で、家族で国内を旅するうちに、私の仕事柄もあって、人種問題と先住民のことが気になるようになったんです。特に、アフリカ系アメリカ人の人たちの差別の歴史や、迫害、そこに抵抗してきた足跡はとても興味深いものがありました。

──アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の置かれている状況について、どのようなことを感じましたか。

鈴木:アフリカ系アメリカ人の人たちは、本当に厳しい歴史を生きてきています。日本でも話題になったブラック・ライブズ・マター(アフリカ系アメリカ人の命と権利を守る運動)という大きな波は、「もう我慢できない」「もういい加減にしてくれ」という蓄積したものからきていると思うんですね。多くの人たちが、すごく諦めながら生きている。

 ワシントンDCの中心地で、キッチンカーに並んでいた時のことです。私たちの後ろに、黒人のおじいちゃんと小さな女の子が並んでいました。すると、白人の男性が何も言わずに黒人のおじいちゃんの前に入ってきたんです。私も夫もびっくりして、「ちょっと待って。後ろに2人並んでるよ」と言ったけれども、まるで誰もいないかのように白人男性は言うんです。

 その何日か前に、カフェに並んでいたミシェル・オバマ(オバマ元大統領の夫人)の前に、白人の人が入ってきて、「私たちの姿って見えないみたいにされているのよ」と動画で発信しているのを見たばかりでした。ワシントンDCで「ミシェル・オバマに気付かない人なんている?」と初めは思ったけれど、横入りしてきた人は並んでいる人の顔も見ていない。

 白人男性がこういう態度を取るのはアフリカ系アメリカ人の人たちを取るに足らない人だと思っているからでしょう。アジア人の私たちが無視されないのは、差別されていないのではなく、私たちが「お客さん」だからなのだと思います。

 そういう日々の蓄積の中で、アフリカ系アメリカ人の人たちは、きっといろんなことを諦めている。でも、ここは立ち上がらないといけないんだという時に皆が立ち上がっていく。その繰り返しの中で少しずつ歴史を変えていっているのかな、と感じました。きっとみなさん普段から差別されることに疲れてるのだと思います。