(瀧澤 信秋:ホテル評論家)
“ホテルに住まう”プラン販売のメリット・デメリット
コロナ禍は社会の様々な常識を覆してきたが、それはホテルの利用スタイルも同様で、以前では考えられなかったプランを打ち出すホテルも登場した。
その代表例が「帝国ホテル 東京」(東京都千代田区)が始めたサービスアパートメント事業、つまり“ホテルに住まう”というスタイルだ。シティホテル、ビジネスホテルに限らず、様々なホテルでも長期連泊プランが売り出され、グループホテルなら期間内で利用し放題というサブスクリプション(定額制)まで登場して注目を集めた。
長期の宿泊プランを販売することはホテルにとってメリット、デメリットの両面がある。一定期間稼働を埋められるのは最たるメリットであるし、毎日イン/アウトがなければ客室清掃などスタッフの手間が省けて人件費の削減にもつながる。
その一方で、長期間決まった料金で販売することは、需要と供給などに合わせて価格を変動させるダイナミックプライシングによる収益最大化という点からはリスクとなる。ホテルの料金は繁閑に応じて料金を変動させるのが常識だ(変動させないことをプライスポリシーとするホテルチェーンもあるが)。つまり、「儲けられる時にも料金を上げられない客室を生む」というリスクを内含することになる。