ふふ 箱根(筆者撮影)

(瀧澤信秋:ホテル評論家)

 社会全体がコロナ禍と対峙して3年が過ぎたが、あらゆる業界でこれまでの常識が通用しなくなってきたことは言うまでもない。ホテル業界においても同様であるが、コロナ前までインバウンドの活況を呈していた業界だけに、その落差は際立った。激減する予約、宿泊者という苦境に直面しつつ、“宿泊業とは何なのか?”という根本的な問いに向かい合う事業者の姿がそこにはあった。

 宿泊業界全体に“従来のやり方では通用しない”という危機感が広がる一方で、従前より固定観念から脱却し、アグレッシブかつ先取的な取り組みを貫いてきた業態の強さも感じられた。ネガティブなニュースがフォーカスされて大きく話題になることはなかったものの、健闘が光った宿泊施設の特徴のひとつが「高級」というキーワードだ。

コロナ軽症者の受け容れで救われた都市型ホテル

“高級な宿”の概念は人それぞれであろう。都市型ホテルとリゾートホテルを比べてみても訪れるゲストの価値観は多様だろうし、ホテルと旅館でも高級のニュアンスは異なる。

 リゾート・都市型ホテル(高級ではないものの)双方を手がける運営会社の担当者によれば、「リゾート施設は繁閑差が非常に激しいが都市型ホテルはコンスタントに日銭が入ってくるので助かる」と話す。

 本記事では、宿泊施設のニーズについて都市型とリゾートを並列して比較するのは避けるが、観光地、リゾート地の宿泊施設については、繁忙期に稼ぐだけ稼ぎ、低調な閑散期の運営を補う側面がある。それは利用者である我々も実感するところだ。夏期には1泊10万円のリゾートホテルが厳冬期に1万円で泊まれる、といった具合だ。

 これが従来のリゾート施設の常識と認識され、ゆえに“超閑散期”であるコロナ禍が観光地の宿泊施設へ与えた打撃も計り知れない。

 コロナ禍という点でいえば、都市型ホテルは相当なボリュームで軽症者受け容れ施設として白羽の矢が立ち、“救われた”ホテルは多い。例えば、某全国チェーンのホテルでは全体の4分1近くの客室を提供してきたという話もあり、都市型ホテルの特徴的な引き合いだった。