(花園 祐:中国・上海在住ジャーナリスト)
昭和、平成の時代と比べるとその存在感は薄れつつあるものの、日本の産業史において長らく財閥は大きな影響力を有してきました。
「財閥」という言葉の定義はさまざまですが、仮に「同じ屋号を用い、互いに資本関係を有する、多業種にわたる企業連合」という定義に基づくとしたら、三菱グループ、三井グループ、住友グループが日本を代表する財閥グループと言えるでしょう。
このうち三井グループは、戦前においては日本最大の売上規模を誇り、その歴史は江戸時代にまで遡れるなど、日本産業史を語るうえで決して欠かすことのできない存在でもあります。しかしその歴史がメディアなどに紹介されることはあまり多くなく、知らない人がほとんどではないかと思われます。
そこで今回から、恒例の夏の歴史特集記事として、三井財閥の歴史を追っていきたいと思います。初回は、三井家の創業者と名高い三井高利(みつい・たかとし、1622~1694年)の人生と、明治維新の動乱を三井家がどのように乗り切ったのかを紹介します。