写真:PantherMedia/イメージマート

(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)

 中国語で「理財」とは、個人が行う財テクのことを指します。中国ではごく普通の会社員も何かしらの理財をやっています。ただ、その内容はこの1、2年で変化し始めています。

 多くの人が理財を始めるきっかけとなったのは、アリババやテンセントといった大手テック企業が行っている「フィンテックサービス」です。アリババの決済サービスAlipayに組み込まれている「余額宝」は、7億人以上もの利用者を獲得しました(「余额宝用户首次突破7亿:2位亿元户已经跑了,榜一大哥还在」https://aiqicha.baidu.com/yuqing?yuqingId=f757937f78bd598cc14be42989a3baef)。積立金をすぐに引き出せるという手軽さや、2013年のサービス開始当初に年間収益率最大7%(過去7日間の利益から換算したもの)という高収益が人々を引きつけたのです。

「奶茶钱(ミルクティー)1杯分のお金から始める理財」という宣伝文句は、少額投資が中国で広く浸透することに貢献しました。

スマホのAlipayアプリにある理財の機能

 しかし現在、余額宝は当初の勢いがありません。余額宝利用者の一人当たり運用額は、2017年には3300元(現在のレートで約6万2000円)とされていましたが、2021年末には約1000元と3分の1にまで減少しています。余額宝全体の資産総額も、2021年末で約7500億元と、前年同期比で約37%低下しました。

 余額宝離れの要因の一つは、利率の低下でしょう。諸条件によって利率は変わりますが、収益率は以前の7%から1.5%前後にまで下がっています。もちろん銀行の定期預金の利率などに比べるといいのですが、投資の経験を積むにつれ、もっと収益率のいいものに乗り換えようという人が多いようです。

中堅層向けの財テクセミナーが盛況

 そのような人々が向かっているのが、「股票」(株)や「基金」(ファンド、投資信託)です。

 株の保有者は約2億人、投資信託の保有者は約1億人いると見られています(「股民人数逼近2亿!其中“活跃用户”有多少?」http://stock.10jqka.com.cn/20220421/c638555719.shtml、「2021年基金投资者投资知识陪伴需求白皮书」https://finance.eastmoney.com/a/202112292230192567.html)。