早期リタイアを目指す人が現れている中国。資産形成だけでなく、支出を抑えるために住居地を選ぶことなども重要(写真:アフロ)

十分な資産を蓄えて若いうちにリタイアする。「FIRE」という生き方を目指す人が中国にも現れている。「36歳までに早期リタイアする」と目標を語る29歳男性が、どのような考えと計画でその生き方に踏み切ったのか。中国在住の加藤勇樹氏がインタビューした。(JBpress)

 中国、とくにテック企業における働き方の厳しさは、これまで何回かお伝えしてきました。代表例が「996」(朝9時から夜9時まで週6日勤務)というネット流行語です。最近ではテック企業大手のテンセントが「1065」(朝10時から夜6時まで週5日勤務)」を打ち出すなど、労働時間の見直しが始まっていますが、まだ一部の大手企業にとどまっています。

 2022年初め、大手テックメディア「36氪」(36Kr)が大都市地域の残業状況を調査したレポート「2021年轻人加班报告」(https://www.36kr.com/p/1570573509103241)を発表しました。それによると、30歳過ぎの働き盛りの人材の80%近くが恒常的な残業を行っています。これは筆者の実感と近い数値です。

 今後も昇給が続くとしても、現状のような仕事の仕方をいつまでもやっていくのはつらい。そう感じている人のなかから「FIRE」(Financial Independence Retire Early、経済的自立と早期リタイア)を検討する人が出始めています。

 一つの大きなきっかけが、TikTokを運営するByteDanceのエンジニアだった郭宇さんの「FIRE宣言」です。1991年生まれの郭さんは大学卒業後、創業時の「字节跳动」(ByteDance)に加わり、数年間にわたりエンジニアとして働きました。そして28歳を迎えた彼は、今後はビジネスマンとしての時間に縛られたライフスタイルから距離を置き、自身の資産を運用する形で今後人生を設計すると宣言しました。

 その反響は大きく、「ByteDanceを28歳でやめた若者の宣言をどう思うか」という設問記事は約1200万人が閲覧しました(「如何看待年仅 28 岁的郭宇宣布从字节跳动退休?」https://www.zhihu.com/question/375888332)。