日本の食料安全保障のために田中角栄が後押ししたブラジルの大豆生産が、いまでは中国のために機能している。
自国最優先になる食料安保、これから始まる大争奪戦
そもそも、1973年に米国が大豆の緊急輸出措置をとったのは、当時のソ連が影響している。現在では地球温暖化に伴う異常気象が頻発しているが、およそ半世紀前の当時は、世界中が冷却化傾向の異常気象に見舞われていた。これにより、ソ連が大規模な凶作に陥り、米国から小麦や大豆を大量に買い付けたことから、穀物相場が高騰。当時のニクソン大統領が大豆の緊急輸出禁止措置をとったのだった。
結局のところ、当時の日本を襲った大豆ショックも、いまのロシアが引き金となった。
そのロシアでは2010年に干ばつが襲い、凶作となったことから、穀物の輸出禁止措置をとった。そのことで食品価格が高騰したエジプトをはじめ北アフリカで政情が不安定化し、ついには「アラブの春」にまで事態は進んだ。
食料の不足や高騰は国内の政情をもっとも不安定にする要因だ。中国共産党が怖れるのもそこだ。空腹は人々の不満を募らせ、暴動すら起こす可能性がある。中国で「肉」と言えば豚肉で、世界の供給の実に半分を消費している。中国政府は豚肉の供給と価格には神経を尖らせる。だから飼料穀物の需要が増し、世界中から買い付けている。そのことで穀物価格が上がろうが関係はない。自国の事情を優先させる。
2008年にもいまのように穀物相場が高騰して、食料不足に陥った国があった。今回はその時以上に深刻な食料危機がやって来そうだ。食料自給率37%の日本も中国をはじめ世界の食料争奪戦の戦場に臨まなければならなくなる。もはや世界大戦の様相だ。