(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
ロシアによるウクライナ侵攻で、世界が食料危機に――そんな懸念が高まっている。
だが、そもそも食料危機が叫ばれるときには、いつもロシアが引き金になってきた。それに加え、いまでは中国もその背景にある。
ウクライナ侵攻前から小麦価格は上昇
ウクライナは世界第5位、ロシアは第1位の小麦の輸出国だ。両国で世界の小麦の輸出量の約3割を占める。小麦の供給が不足する恐れから国際価格が上昇した。
日本でも、政府が買い付けた輸入小麦を製粉会社に売り渡す「売り渡し価格」が、この4月から2021年10月期と比べて平均17.3%も引き上げられた。ここにエネルギー価格の高騰や円安も加わって、日本の食品は値上げが相次ぐ。
だが、この売り渡し価格の引き上げはウクライナ侵攻の影響によるものではない。日本が依存する北米産の小麦が昨年の夏の干ばつで不作となったことに加えて、すでに昨年のうちからロシア通貨のルーブルが値下がりし、ロシア国内の食料価格が上昇した。ロシアは小麦の国外流出を防ぐために12月に輸出関税をかけることを表明して価格が上がった。
そこにウクライナ侵攻が拍車をかけた。トウモロコシも両国で世界の輸出の約2割を占めている。国連食糧農業機関(FAO)が今月6日に明らかにしたところによると、ロシアが黒海の港を閉鎖したことで倉庫にある約2500万トンの穀物が輸出できない状況にあるという。