日本が農業開発に尽力したブラジル、今は中国への大豆輸出拠点へ変貌

 世界的に肥料の需要が増しているのは、南米でトウモロコシや大豆の増産が進んでいることが影響しているとされる。そこにも、中国が養豚飼料として穀物輸入を増やしていることが背景にある。

 2018年に米中貿易戦争が勃発。当時のトランプ政権が打ち出した追加関税措置に対して、中国は米国産大豆に報復関税をかけた。このことから中国の大豆輸入における米国依存度は低くなった。その代わりに中国が大豆輸入の依存度を高めたのがブラジルだった。

 そして、そのブラジルを農業大国にしたのが、他でもない、日本の首相だった田中角栄だ。その背景には日本が1970年代に経験した食料危機がある。

 日本の2020年度の食料自給率(カロリーベース)は37%と、統計のある1965年度以降で最低を記録した。このうち大豆の自給率は21%で、輸入の約7割を米国に依存している。米国依存の構図はずっと変わらないが、かつてその米国が大豆の輸出禁止措置をとったことがあった。1973年のことだ。

 このとき、日本に大豆が入らず「豆腐が食えなくなる」「味噌がなくなる」と大騒ぎになった。

 そんな米国に振り回される惨状に、日本の首相としてブラジルを訪問した田中角栄が、当時のエルネスト・ガイゼル大統領に共同の農業開発プロジェクトを提唱。1979年から総面積2億400万ヘクタールの荒れ地だったブラジル中部のセラード地域の農業開発協力事業がはじまった。それがいまでは、このセラードだけで世界の大豆生産の約3割を占める巨大生産地帯となっている。