(朴 承珉:在ソウルジャーナリスト)
「建国以来の大動乱だ」。北朝鮮の金正恩総書記は5月14日、党中央委員会政治局協議会の席でこう述べた。
大動乱とは、新型コロナウイルス感染者の激増のことだ。これまで北朝鮮は「新型コロナウイルス感染者ゼロ、コロナ清浄地帯」と主張してきたが、一転して感染爆発に至った背景にはいったい何があるのだろうか。
ワクチン未接種国
現在、北朝鮮の指導部は、新型コロナ感染の爆発的な速度を目の当たりにし、かなり緊迫しているようだ。
彼らが特に心配しているのが「住民の中に新型コロナウイルス感染に対する恐怖が広がること」(在中国北朝鮮領事館関係者)だという。住民の間に過度な恐怖が広がると、当局の統制が不能な状態になる可能性があるからだ。
北朝鮮には新型コロナが蔓延しやすい土壌があった。
というのも、ワクチン接種率が「0%」だからだ。アフリカのエリトリアと並び、世界で2国しかない「ワクチン未接種国」なのである(ただし、金正恩総書記に関しては一昨年に、在中国北朝鮮大使館から送られたワクチンを打ったという情報がある)。