アカデミックな研究者が踏み入れた「副業の森」

「とても意味のある新薬だと思って取り組んできた研究をストップさせられて、会社に失望してしまったんです。ほかにも人間関係とかいろいろありまして、思い切って転職しようと考えました」

 Iさんは転職エージェントに登録し、ベンチャーや外資系の製薬会社を紹介してもらいながら、転職活動を始めた。しかし、おじさんの転職は、科学者でも思うようにいかない。

「これまでに製薬会社を5社ほど受けました。経営者面接などいいところまでいくこともありましたが、最終面接で落とされるんです。私は英語が苦手で、外資系だと外国人経営者との面接がダメで……。もちろん年齢もネックになっているでしょうね」

 ちなみに、Iさんは名脇役俳優の平田満のような、やさしさと誠実さがにじみ出る雰囲気のおじさんだ。中高年男性が再就職でネックになりそうなコミュニケーション能力の低い、プライドが高そうな印象はない。そんなおじさんでも、やっぱり転職は難しいという現実がある。

 Iさんのお子さん二人は現在大学に通っていて、あと数年はお金がかかる。家族のことを考えると、すぐに会社を辞めるわけにはいかない。Iさんは社内に残る代わりに、一旦、研究職を退き、別の部署に異動した。しかし、Iさんはそこでも鬱屈とすることになる。
 
「異動してみたものの、研究職と比べると、仕事は面白くありませんでした。自分としてはクリエイティブなことをやりたい。収入と自分のやりたいことが満たされるならば、転職したいのですが……」

 職種変更で収入も減ったIさんが、気分転換にやってみようと考えたのが副業だった。

「今までは副業なんて考えもしませんでした。でも、会社への未練もなくなり、コロナでリモートワークになった影響もありで、外でいろいろやってみたいと考えるようになって。もちろんお小遣いもほしいので」

 そんなIさんが手始めに挑戦したのが、「体験モニター」だ。

おじさんがハマりがちな「副業の森」の5つのフェーズ(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70099)