コロナで窮状が深まれば深まるほど核実験に現実味
――北朝鮮でコロナの感染がさらに広がると、どんな深刻な事態が起こることが予想されるか?
「3点、深刻な事態が起こるだろう。第一に、全国的なロックダウンが広がれば、コロナの感染よりも、むしろ飢餓の方が深刻化していくことだ。
北朝鮮は、前述のようにこの2年あまり、鎖国状態を続けてきた。今年に入って、ようやくわが国との国境を開いたが、いままた閉めてしまった。それによって、深刻な食料不足に陥っている。
そもそも国境封鎖の他にも、2017年12月に国連安保理が科した強固な経済制裁によって、北朝鮮経済は大打撃を受けている。それにここ数年、秋の収穫前の洪水被害も深刻だ。
それらに今回のロックダウンが加わり、『四重苦』となった。このままロックダウンを続ければ、秋の収穫前の夏場に食料危機が発生するだろう。一般の北朝鮮国民にとってロックダウンとは、コロナ感染よりも餓死が目の前に迫ってきた事態なのだ」
――その他の2点は?
「二つ目は、ロックダウンによって、農業生産に悪影響が出てきたため、秋の収穫時に凶作が予想されることだ。昨年の冬も、今世紀最悪の凍死者と餓死者を出したと言われたが、今年の冬場の状況はさらに悲観的だ。
三つ目は前述のように、感染が朝鮮人民軍に蔓延していることだ。朝鮮人民軍の最高司令官でもある金正恩総書記は、軍を鼓舞するため、ミサイル実験や核実験などをますます強行していく可能性がある」
――5月末に7度目の核実験を行うとの観測もあるが。
「北朝鮮は現在、豊溪里(プンゲリ)の核実験施設で、プルトニウム型の臨界前核実験を準備している。コロナ禍で冷めきった国内状況を打開するためにも、また今月下旬に訪韓、訪日するジョー・バイデン米大統領に見せつけるためにも、核実験を強行する可能性がある。北朝鮮の核実験は、中国としても強く反対しており、頭の痛い問題だ」