(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
岸田文雄総理の韓国大統領就任式への出席は見送られることになりそうだ。
韓国の中央日報(WEB版)は4月29日、同日付の産経新聞の記事を引用し「韓国側からは首相の出席に期待する声が高まっていたが、いわゆる徴用工訴訟や慰安婦問題での解決策は示されておらず、(岸田首相の訪韓は)時期尚早と判断した」とし、岸田総理は就任式への出席を見送り、林芳正外務大臣が出席する見込みだと報じた。
韓国側も日本側のこうした反応は織り込み済みだったと思われる。
韓国も覚悟していた岸田総理の「参加見送り」
4月24日~28日の日程で日本を訪問していた政策協議団の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)団長(国会副議長、国民の力)は、4月26日岸田総理と会談、岸田総理への就任式招待を伝えた模様だが、記者団に対しては「通常、各国首脳の出席はその国が決める」「世界各国のどの首脳も出席意志を送って下されば最善の礼節を守って迎える準備をしている」と控えめに述べるにとどめていた。
岸田総理の就任式出席に期待を示す一方で、これが実現しない場合にも日韓両国の今後の外交交渉にマイナスの影響を及ぼさないよう予防線を張っていたということであろう。
韓国の新政権には長年外交に携わってきた人が多く参画する予定であるだけに、「現在の日韓関係の状況下では岸田総理も訪韓できないだろう」と現実的な判断をしたのだと思われる。