物損事故は自賠責の補償範囲外

 当然のことですが、交通事故によって他人の車や建物などの「財物」に損害を与えた場合、事故を起こした運転者は法律上の損害賠償責任を負うことになります。

 車の購入時や車検時には自賠責保険の加入が義務付けられていますが、この保険はあくまでも、最低限の「対人保険」です(保険金額の上限は、死亡事故の場合3000万円、重度障害の場合4000万円)。「モノ」の損害に対しては、自賠責からは1円も支払われませんので、物損事故に対しては、任意の自動車保険で「対物保険」を契約しておく必要があります。

「物損事故」といっても、決して甘く見てはいけません。過去には「億」を超えるケースも多数発生しているのです。

 日本損害保険協会のサイトには、対物事故の高額損害額として、以下のような判例が紹介されています。

●2億6135万円/積荷(呉服・洋服・毛皮)の損害<1994年7月19日>

●1億3450万円/店舗(パチンコ店)<1996年7月17日>

●1億2036万円/電車・線路・家屋<1980年7月18日>

 このような事故が起こった場合、よほどの資産家でもない限り、個人での賠償は不可能でしょう。

 実は、ひと昔前まで、乗用車の対物保険は保険金額に上限が設けられていましたが、現在は対物保険でも「無制限」という設定が可能になっています。任意保険をかける場合は、万一に備え、対人はもちろん、対物も無制限で契約しておくことをお勧めします。