(北村 淳:軍事社会学者)
現在進行中のロシアのウクライナ侵攻の次は、近い将来、中国の台湾侵攻が勃発するのではないかと危惧されている。
しかしウクライナ侵攻と台湾侵攻を短絡的に同一視するのは誤りである。
両者には構造的な共通点も存在するが、侵攻国側の動機はもとより、民族的・宗教的・文化的・政治的・経済的背景などに根ざした戦争原因が大幅に相違している。それだけではなく、ロシアとウクライナは陸続きであり、中国と台湾は陸上国境が存在しない。そうした地形的条件は、侵攻の形態や展開を完全に異にすることを意味している。
一方、最大の共通点としては、侵攻国(ロシアと中国)は両者ともにアメリカが勢力を削ぎたいと考えている国であるという点だ。そのため、バイデン政権がアメリカの覇権維持という観点から、宿命的侵攻ともいえるそれらの軍事攻撃を似通った方針で利用しようとすることは大いにあり得る道筋だ。