リスクは、欧州がウクライナを「仲間に入れてやる」かのような態度を取り、だらだらと待たせておくことだ。
むしろ1990年代初めに東欧諸国が旧ソ連の支配を振り払った時に歓迎されたように、EUはウクライナを熱烈に歓迎すべきだ。それには政治的な支援と忍耐に加え、経済復興のための多額の援助が必要になる。
ロシア挑発のリスクと脅しから逃げるリスク
もう一つの心配の種がマクロン氏の懸念だ。つまり、NATOがロシアを挑発してしまうことだ。
プーチン氏はこの戦争が始まった当初から、「歴史上全く例のないような結果」などという表現を用いて、西側が介入すれば核兵器の使用に至る恐れがあるとほのめかしてきた。
そのため西側は賢明に、NATOがロシア軍と戦うことはないと明確にした。もし両軍が戦ったりすれば、戦争が制御不能に陥って壊滅的な結果をもたらしかねないからだ。
とはいえ、核兵器をちらつかせるプーチン氏の脅迫から逃げることにも、リスクはある。
ウクライナへの支援を制限すれば、ロシアが不安定な――従って一時的な――和平をゼレンスキー氏に押しつけることに手を貸す羽目になる。
プーチン氏の脅しに褒美を与えることになり、核の侵略の次の舞台を整えてしまう。
対照的に、強力な兵器の支援増量と制裁の強化なら、支援の量は変わるもののその性質は変わらない。
3月末には、ウクライナの成功を目の当たりにしたロシア側が、北部での作戦を拡大するどころか中止した。
こうした理由から、NATOがプーチン氏の不明瞭な脅迫に敢然と立ち向かうこと、そして核兵器や化学兵器を使用したりすればロシアが完全に孤立すると明確にすることが、最良の抑止策になる。
目を上げ、立ち上がれ
紛争は予測不能だ。歴史は、短期間で終わるはずが何年も続いた戦争に満ちあふれている。
ウクライナは単に生き延びることによって、今回の戦争の序盤に勝利した。今後は前進しなければならず、そのためゼレンスキー氏はこれまで以上の西側の支援を必要としている。
もし質の悪い平和と質の良い平和との間に立ちはだかる壁が欧州諸国の政府の想像力の欠如だったとしたら、何ともひどい話だ。