ロシアの火力を過小評価してはならない。たとえ戦力が低下し、兵士の士気が下がっているとしても、塹壕(ざんごう)戦に持ち込む力はある。

 ウクライナにとっての勝利とは、ドンバス地方の部隊を無傷で守り抜くことであり、その部隊を用いて占領地域でのロシアの支配確立を拒むことだ。

 そのためには西側がさらに厳しい制裁をロシアに科し、戦闘機や戦車を含む兵器をウクライナにもっと供給してくれなければならない、とゼレンスキー氏は訴えた。

 制裁は、ロシアが戦争を長期間続ける能力を削ぐ。兵器は、ウクライナが領土を取り戻す助けになる。

 だが、北大西洋条約機構(NATO)諸国は、大統領の望みに応じることを拒んでいる。

 西側とウクライナの両方にとって何が危険にさらされているかを考えれば、これは非難に値する戦略的ビジョンの欠落を露呈している。

勝利がウクライナと欧州にもたらすもの

 ウクライナにとっては、決定的な勝利は、ロシアによる次の侵略を抑止することになる。ウクライナの勝利が有無を言わせぬものであればあるほど、和平を損ないかねない妥協に強く抵抗できるようになる。

 また、勝利は、オリガルヒ(新興財閥)やロシアの潜入による腐敗が少ない戦後民主国家を立ち上げる最良の土台にもなるだろう。

 西側が勝利から得られるものも、同じくらい大きい。ウクライナは民主主義の大義を勢いづけるだけでなく、欧州の安全保障も強化するからだ。

 ロシアは300年に及ぶ帝国主義の時代に、欧州で何度も戦いを繰り広げた。

 ポーランドやフィンランドを相手に回した時のように侵略者になったこともあれば、ナチス・ドイツやナポレオンの率いるフランスから大きな脅威と見なされ、自国が侵略の犠牲になったこともあった。

 強く、民主的なウクライナは、ロシアの拡張主義を阻止するだろう。なぜなら、ウクライナの国境が強固になるからだ。