太平洋戦争時、ソロモン諸島のガダルカナル島に上陸する米軍兵(資料写真、写真:TopFoto/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカのトランプ前政権は、米国の安全保障戦略を抜本的に転換する道筋をつけた。つまり、外交軍事政策の最優先地域をアジア太平洋地域に据えて、その地域でのアメリカの覇権を奪い去る勢いの中国を仮想敵国筆頭に据えたのである。

 だがバイデン政権は、そのようなトランプ路線を実質的に消し去ってしまい、ヨーロッパ大西洋地域を最優先地域とみなしてロシアを筆頭仮想敵国に据える、というアメリカの伝統的なリベラル大西洋主義世界秩序に引き戻そうとしている。

 そして、自らの家族に疑惑が持たれている「ウクライナゲート」のもみ消しという強い動機も加わって、ロシアによるウクライナ侵攻にアメリカのメディア、国民の目を集中させることに傾注し、見事なほどに「親ウクライナ・反ロシア」感情の醸成に成功している。

隅に追いやられた「中国との対決」

 このような米国内の動きに強い危機感を覚えているのが、中国との対決のために戦略再構築、組織再編成、教育訓練の改定、それらに適合させての装備調達開始などをスタートさせている海軍、海兵隊を中心とするアメリカ軍関係者たちだ。