広州・白雲国際空港からトンガに向かう中国人民解放軍のY-20

(北村 淳:軍事社会学者)

 先週の本コラム(「米国はどうしてしまったのか?真っ先にトンガに駆けつけない米軍」)でトンガ災害支援に出動しないアメリカを尻目に中国が軍用機や軍艦を派遣し南太平洋でのプレゼンスをも高めようとしている状況を紹介した。

 そのコラムの執筆段階では、中国軍がトンガに派遣した輸送機に関連する詳細情報は明らかにされていなかった。そのため、おそらく広東省の空軍基地からY-20軍用大型輸送機をポートレスビーあるいはガダルカナル経由でトンガのファモツ国際空港に送り込んだものと予測した。その後、中国当局が公表した詳細情報によると、広東省の広州白雲国際空港から2機のY-20輸送機に合計33トンの緊急支援物資を積載して発進させ、1万km以上を飛行させファモツ国際空港に送り込んだということである。

 Y-20の最大積載量は66トンといわれており、99A式主力戦車1輛(54トン)を積載した場合の最大航続距離は7800kmといわれていた。ところが、今回の長距離飛行では1機あたり16.5トンと最大積載量の1/4だけの貨物を搭載させて長距離飛行を実施した模様だ。

 今回の支援作戦によって、中国軍は長距離戦略輸送能力ならびに緊急輸送任務を遂行する能力を有することを証明したのである。また、公開されている限りにおいては中国軍機が南太平洋を横断した初飛行であるため、中国空軍将兵ならびにY-20のナビゲーションシステムの完成度を誇示した結果となった。