3月27日、バイデン大統領はポーランドの首都ワルシャワでの演説で、「ロシア軍が1インチでもNATO(北大西洋条約機構)領土内に入ることは許さない」とする旨の発言を再び繰り返した。
先日、「戦犯」と呼んだプーチン大統領については「ブッチャー」とこき下ろし、「権力の座に座り続けることはできない」と言い切った。「汚い言葉が次から次へと出てくる」と米共和党関係者は私的勉強会でコメントしたが、その通りの発言が続いている。
これに対して、米国のブリンケン国務長官はただちに「米国はロシアのレジーム・チェンジを考えていない」と打ち消した。ロシアとの仲介に努力を続けているフランスのマクロン大統領も、(バイデン大統領の)「ブッチャー」などという物事を悪化させるような言葉を使わないと述べるとともに、自分たち(NATO)がロシアと戦う意思のないことを語った。
また、英国のトラス外相は、「ロシアがウクライナ(全土)の侵略をせずに軍を撤退させるなら、これ以上の制裁はしない」と発言。ブリンケン国務長官からも支持を得た。バイデン大統領の強い語気とは裏腹に、米政府担当筋や英仏は戦争の終結に向けて動き始めた印象である。
以下のように、バイデン大統領とブリンケン国務長官の間では、言動の違いが目立ってきている。もしかすると、米政権内の分裂が始まっているのかもしれない。
ウクライナの放送局やSNSは、ロシアの侵攻当初から(軍事支援という点で)ほとんど変化のないバイデン大統領にしびれを切らし始めており、「飛行禁止区域(No-Fly Zone)を設定してほしい」「さらなる経済制裁など対ロ攻撃的な対応を求める」といった話が飛び出している。
ロシア軍によるウクライナへの戦闘開始から1カ月を超えた現在、ロシア軍の中でも司令部に対する不満の声が報道を通して相次いでいる。同様に、ウクライナ側にもNATOへの不満が強まっているようだ。
ロシアはバイデン大統領の発言に対して、「ロシアの大統領を決めるのはロシア国民だ」として、「ロシア対民主主義」という米国のイメージ戦略を打ち消そうとした。