2012年にマネジメントバイアウトの手法で株式の非上場化したことを一つの転機として、事業方針を見直すことになります。立川市の約1/25の土地を所有していることから、より広域なエリアにおける価値向上や都市格の向上を目指すことが、地域にとっても自分たちの事業基盤にとってもプラスになるはず、というマインドを持つようになります。

藤田 そういった経緯があったんですね。駅に近い広大な土地を、★何を目的に、どこから手をつけていくのか★・・・。どのような視点から構想をしていきましたか?

横山 プロジェクトは“根本的に何をやりたいのか”を掘り下げるところから始まりました。巨大な敷地を我々の利潤の追求のためだけに費やすのには限界があります。100年先にどうありたいのか、そして、この場所のポテンシャルが何なのかを考えました。

 次の時代にどうあるべきかを考えたとき、これまでの時代には資本主義的で効率性が重視されてきたからこそ、人々が心身ともに健康的に過ごせる環境を求めていること、そして、都市圏にありながらも昭和記念公園などの大規模な自然環境を持っているというポテンシャルが時代のニーズに応えられるだろうと考えました。

横山 友之氏
(株)立飛ストラテジーラボ 執行役員 戦略企画本部本部長
公認会計士、税理士、フィナンシャルアドバイザー、デロイトトーマツで会計監査、M&Aアドバイザリー
立飛企業(株)および新立川航空機(株)のMBO(マネジメントバイアウト)についての助言に携わるほか、GREEN SPRINGS開発責任者として新街区の開発プロジェクトを統括

従来の商業施設と一線を画す、“空の容積率”の最大化

藤田 GREEN SPRINGSに一歩足を踏み入れると、空が大きく見え、建物の間を吹き抜ける風を感じました。この気持ち良さは、ほかの商業施設では経験したことがありません。

横山 敷地面積は1万2000坪。建築上の容積率は500%で、理論的には6万坪分の建築が可能ですが、それはあえて行いませんでした。都心型の開発が、時代のニーズとここのポテンシャルに合わないと感じたからです。たとえば光や空気を感じられないところに半日でもいると、それだけで疲れてきませんか(笑)。

藤田 よくわかります。新型コロナウィルスの流行で、人との物理的距離が生まれ、自然と距離が縮まった現在は、特に。