食事量が減りがちな高齢者や病気の人は間食でプラス
最後は高齢者についてだ。
高齢者に必要なたんぱく質量は成人の頃とあまり変わらない。それなのに、活動量が減って空腹を感じにくくなることで食事の摂取量が減りがちになり、筋肉量も減ってしまうことがある。動くための筋肉が少なくてしんどいからと活動量が減って食欲が湧かない・・・という「負の連鎖」が起こりやすくなり、ロコモやサルコペニア、フレイル*など深刻な状態に陥ることがある。だから、意識して食事でしっかり栄養を取ることが大切だ。
*「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」は、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の衰えや障害によって身体能力が低下した状態。転倒、骨折や関節の病気など運動器の故障は介護が必要になるリスクが高くなる。「サルコペニア(筋肉減少症)」では、広背筋・腹筋・膝伸筋群・臀筋群などの抗重力筋で筋肉の減少が多く、日常生活での立ち上がりや歩行がしにくくなり、放置すると歩行困難になる。「フレイル」は、心身のさまざまな機能が加齢や病気などによって低下してしまった状態で、健康と介護が必要な状態との中間にあたる。
「誰かのために食事を準備していた頃は彩りやバランスを考えていたのに、自分ひとりだとごはんにふりかけとか、お茶漬けで済ませてしまうというお話を一人暮らしの高齢の方から聞くことがあります。時々であれば問題ないのですが、習慣になるとフレイルに近づいていくリスクがあります。
主菜、副菜、主食のそろった食事を意識してもらいたいのですが、かえってハードルが高くなるので、卵や豆腐、鮭フレーク等の加熱なしで食べられるものを取り入れましょう。お茶を牛乳や豆乳に変える、おやつをプリンやカステラにするなど、間食でもたんぱく質の多いものを取るといいと思います」
「ご高齢の男性に多いのですが、長く調理の習慣がなかった人にとって自炊はストレスが大きく、それが食事量の低下につながることもあります。そんな時はスーパーやコンビニに歩いて行って、好きな惣菜やお弁当を購入すれば、運動量と食事量の両方が増やせます」
歯の具合が悪くなるなど噛む力が弱い人や嚥下がしにくい人は市販の高栄養食品がおすすめだ。少量で栄養価の高いレトルト食品やドリンクを売っているスーパーもある。アイスクリームやゼリーもあるので、間食にも取り入れやすい。
「食べにくい、食べられないことでご家族が苦労されることも多いですが、今は市販の高栄養食品がたくさんあるので、ぜひ利用していただきたいですね。寝たきりや嚥下が難しくなってからではなく、食が細くなってきた頃から間食や置き換えに取り入れていただければ、好きな味や食べやすいものがわかります。食事は香りや彩りといった楽しさも大切ですが、こだわりすぎるとご本人も周りも疲弊してしまうので、便利なものを活用していきましょう」
どの年代でもバランスよく食べ、適度な運動をすることが大切だ。難しいと感じた時には、薬局や病院の管理栄養士さんに気軽に相談してみてはいかがだろうか。