香港で押収された偽ブランド品(写真:AP/アフロ)

 模造品や類似品、イミテーションなどの偽物といえば中国が世界的な偽ブランド天国だが、北朝鮮は中国に次ぐ第2の偽物天国に浮上している。北朝鮮メディアのCMには、クリスチャン・ディオールやプラダ、ナイキ、アディダスなどのブランド品を身に着けた人たちが登場するが、大半は偽物だ。香港や東南アジア、中東でも質のいい北朝鮮製の偽ブランド品が取引されている。北朝鮮はどのようにして「第2の偽物天国」に浮上したのだろうか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 北朝鮮製の偽物は「525号基地」でつくられている。国防委員会の傘下で、2013年5月25日に建てられた。北朝鮮政府も偽物の違法性を認識しており、隠ぺいと秘密を保持のため「工場」ではなく「基地」と名付けられたようだ。

 525号基地を立ち上げたパク氏は「朝鮮銀河貿易総会社」の中国広州支社長だった。朝鮮銀河貿易総会社は北朝鮮最大の被服加工貿易会社で、30年以上にわたって世界各国の被服の加工を手がけている。

 10年以上勤務したパク氏が中国広州支社長として派遣されていた時、中国の偽物業者からある提案を受けた。

「中国政府は、世界各国で反発を受けている偽物天国の汚名をすすぐため、偽物製造業者の取り締まりに乗り出した。取り締まりは今後、ますます厳しくなるだろう。偽物を製造する設備と材料を提供するので、北朝鮮でつくってもらえないか」というものだった。

 偽物づくりを負担に感じないだけの十分な費用を払うという提案だった。中国の偽物製造者にとって、北朝鮮で生産すると取り締まりを避けることができるうえ、人件費も安い。一石二鳥だったのだ。