(英エコノミスト誌 2022年2月12日号)
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テクノロジーに夢中になり、資金を低利で調達できた21世紀初頭の時代を象徴する企業として、孫正義氏が創業し、経営している投資複合企業ソフトバンクグループ(SBG)の右に出るところはほとんどない。
「マサ」として知られる孫氏が1981年に立ち上げた無名のソフトウエア販売会社は、借入金を使った勝負を次々仕掛けてインターネット企業、巨大通信会社になり、さらには本人が昨年、世界最大と形容したベンチャーキャピタル(VC)会社にのし上がった。
今ではニューヨークのヘッジファンド、タイガー・グローバルや、老舗VCのセコイア・キャピタルを優にしのぐ規模を誇る。
バランスシートの一部は不明瞭だが、同社は巨額の借金を続けており、世界で最も借り入れの多い非金融企業の一社だ。
投資先であるシリコンバレーの企業の多くがそうであるように、SBGにも圧倒的な支配力を有し、難解な言葉を使ってとうとうと話すことを厭わない創業来の大株主がいる。
孫氏は300年先を見据えて投資すると話している。
だとするとSBGは金融会社としては可能な限り不死になる。だが、同氏が最も懸念すべきなのは今ここの出来事だ。
孫氏が賭けてきた2大トレンドに異変
なぜか。それは、SBGがあおると同時にその恩恵にもあずかってきたハイテク・ブームが終わりを迎えようとしているかもしれないからだ。
インフレが数十年ぶりの高率に達したことから各国の中央銀行が利上げに乗り出している。SBGのようにレバレッジの高い企業にとっては、これで信用市場がタイトになる恐れがある。
それ以上に重要なのは、同社が投資しているハイテク系スタートアップ企業の長期的な価値が金利の上昇によって大きく変動することだ。
高成長が期待できるとはいえ、利益が生じるのはかなり先のことだからだ。
ソフトバンクはここ数十年間、ビジネス界の2つのメガトレンドについて最大級のギャンブルを仕掛けてきた企業であり、技術ファンや低金利が姿を消したら何が起こるか、考えてみる価値はある。
稀代の投資家ウォーレン・バフェット氏がかつて言ったように、誰が裸で泳いでいるかは潮が引いてみて初めて分かるものだ。
孫氏の水着の状態が一体どうなっているのか気になるところだ。