(英エコノミスト誌 2022年2月5日号)

上海にいると中国はすでに高所得国になっているように思える

今年が中所得国としての最後の年になるかもしれない。

 中国は「中所得国の罠」の影に付きまとわれている。新興国が成長を遂げて素早く貧困から抜け出すが、結局、豊かになる前に行き詰まるという概念だ。

「我々は向こう5年間、中所得国の罠に陥るのを避けるために細心の注意を払わなければならない」

 中国の李克強首相は2016年にこう語った。当時財政相だった楼継偉氏は、中国が罠にはまる確率を50%と見積もったことがある。

中所得国は今年が最後か?

 罠の名付け親はエコノミストのホミ・カラス、インダーミット・ギル両氏で、ともに世界銀行に勤めていた2006年に作った造語だ。

 この言葉は明白な疑問を呼ぶ。何をもって中所得と見なし、何をもって中所得を超えたと見なすのか、ということだ。

 カラス、ギル両氏は世銀自身の所得分類を採用した。

 この分類は1989年に、高所得国をその他の国と区別する線を引いた時に確立されたものだ。線引きは、当時「工業市場経済」と見なされていた国をすべて含まなければならなかった。

 そこで、1987年当時の物価で国民1人当たり6000ドルの国民所得で線が引かれた。アイルランドとスペインがぎりぎり入る水準だ。

 この線は現在、1万2695ドルで、世界の5大経済(米国、英国、中国、ユーロ圏、日本)の物価と為替レートの加重平均に沿って上昇していく。

 2020年には世界80カ国がこの基準を満たし、前年より3カ国少なかった。

 新型コロナウイルスのパンデミックのために、モーリシャス、パナマ、ルーマニアが中所得国の分類に転落したからだ。

 指導部の不安にもかかわらず、あるいは不安のおかげか、中国は今、この定義で高所得国になる寸前まで来ている(図参照)。

 米ゴールドマン・サックスの直近の予想に基づき本誌エコノミストが試算したところ、中国は強い通貨にも支えられて、来年この線を越える可能性がある。

(高所得国への移行は、世銀が前年のデータに基づき分類をアップデートする2024年半ばまで正式には発表されない)

 もし本誌が正しければ、寅年である2022年が中所得国としての中国の最後の年になるかもしれない。その後は「太った猫(英語で金持ちの意)」になっていく。