(英エコノミスト誌 2022年1月22日号)
ボリス・ジョンソン氏は昨年9月初め、マーガレット・サッチャーの11年の記録を破り、英国近代史上最長の在任期間を誇る首相になるビジョンを明らかにした。
傲慢な男子生徒のように、あまりに身の程知らずだった。
同氏は今後数日か数週間で、自分が率いる党の議員らによって首相の座を追われるかもしれない。
それより可能性が高いのは、絶えず立ち退きの通告を受けながらダウニング街10番地(首相官邸)に居座り続けることだ。
いずれにしても、ジョンソン氏はもう首相としての自分の運命をコントロールできない状況にある。
パーティーゲートは幼稚に思えるが・・・
ジョンソン氏の権威失墜の直接の原因は、表面的には、笑ってしまうほど幼稚だ。
英国全土に厳しいロックダウン(都市封鎖)が敷かれていたその時期に、首相官邸では深夜の酒盛りが常態化していた。
首相は不誠実にものらりくらりと言い逃れを試みたが、功を奏しなかった。それどころか、自分と妻も一緒になって騒いでいたことが暴露された。
与党・保守党の下院議員たちはこれから、ルール違反を重ねる首相の判断ミスを、首相が手品のごとくひねり出した87議席差の実質多数、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)の実現、世界クラスのワクチン接種プログラム、そして時代の精神をガラリと変える天賦の才と天秤にかける。
ドナルド・トランプ氏は1年前の米連邦議会議事堂襲撃で担った役割にもかかわらず、いまだに共和党を牛耳っている。
だとすると、ミートパイを肴にソーヴィニョン・ブランを楽しむパーティーは首相解任に相当する罪なのだろうか――。
英国のためを思うのであれば、「相当する」と判断すべきだ。
一つの理由は、パーティーを継続的に開いていたことは、ジョンソン氏の特権意識の証拠だからだ。
これは、自分と仲間に適用されるルールとその他全員に適用されるルールとは別だという考え方だ。
政府のトップにおけるダブル・スタンダードは、公務員全体を腐敗させる傾向がある。
それ以上に重要なのは、このパーティーの一件が、ブレグジット後の英国を悩ませているジョンソン氏の2つの特性を浮き彫りにしていることだ。英国が今後繁栄するためには、これらの特性を克服しなければならない。