(英エコノミスト誌 2022年1月8日号)

中国のネトウヨは日本の暗い歴史を学ぶべきなのだろうが・・・(写真は北京)

中国のオンラインナショナリストは至る所に敵国の影を見て取る。

 不安を覚える世界は長年、中国でナショナリズムが高まっていることから、いつの日か普通の市民――特に若者――が制御できない怒りを爆発させるのではないかと心配してきた。

 ここ数カ月間の動向が何らかの手がかりになるのであれば、外国人はいつの間にか広がる脅威を見逃したことになる。

 それは、外国嫌いの猜疑心が危険ながら儲かるゲームと化すことだ。

 中国とほかの国々との架け橋になるのが自分たちの役割だと考える中国の市民社会運動家、非政府組織(NGO)、民間企業などにとって、今は実に恐ろしい時代だ。

 中国共産党や人民解放軍の支配下にあるメディアから支援を受けていることもあるナショナリストのブロガーたちは何カ月も、外国から助成金を受け取る団体や個人はけしからんと罵声を浴びせてきている。

 世界に及ぶ中国の影響が大きくなっていることへの諸外国の懸念をそのまま紹介するだけでも、しかも環境問題のような比較的安全な分野で活動したりしていても標的にされることがある。

中国批判への激しい攻撃

 昨年には、一般向けの科学動画を制作していた回形針(英語名ペーパークリップ)がオンラインナショナリストに攻撃され、業務停止を余儀なくされた。

 批判されたのは、作った動画の内容だった。

 中国がブラジルから大量に買い付けている大豆はアマゾンの森林破壊と関係がある、食べる肉の量を減らすことが地球のためになるとの指摘を盛り込んだところ、中国への憎悪をまき散らしていると見なされたのだ。

 また、魚介類の乱獲をテーマとする動画を作ったオンラインのセレブたちは、中華民族の裏切り者だと指弾されている。

 動画の一部は英国を本拠地とする慈善団体のために制作されたもので、海産物をもっと責任を持って消費するよう中国国民に促す内容だった。

 ナショナリストたちはこの動画に、中国人にはたんぱく質を摂取させない、欧米人のために取っておきたいという「邪悪」な思惑を察知する。

 上海に本部を構え、アフリカで持続可能な開発を促進し、疎外されている人々を支援するボランティアの機会を中国の若者に提供している社会事業団体の中南屋(英語名チャイナハウス)は攻撃され続けている。

 中国南部に渡ってきたアフリカの人々が差別に直面していることに関心を向かわせたり、違法な象牙を購入している中国人バイヤーについて調べたりしたことなどが怒りを買った。