(英エコノミスト誌 2022年1月29日号)
FRBの金融引き締めから賃金コストの上昇まで、投資家は先行きを悲観している。
株式トレーディング用のディスプレーが赤色に点滅すると、あるトレーダーが「ああ、少なくとも何かが値を下げているんだな」と皮肉を言った。
今年に入ってまだ4週間も経たないのに、1月26日の売買が終わる頃にはS&P500種株価指数の年初来下落率が10%に届こうとしていた。
ハイテク株の比重が大きいナスダック総合指数の下落率はもう2ケタに達している。
26日に定例の政策決定会合を終えた米連邦準備理事会(FRB)は、高インフレと戦うためには金利が近々上昇する必要があるとのメッセージを発している。
投資家にとって2022年の幕開けは厳しいものになった。
神経とがらす投資家
市場全体を網羅する株価指数の日次の値動きだけでは、市場の不安感を的確に読み取れない。ドラマの大部分は水面下で、すなわち各産業や個別銘柄のレベルで繰り広げられている。
特にパフォーマンスが悪いのはハイテク株だ。
実際、ハイテク株の割合が低く石油会社とコモディティー(商品)関連企業の割合が高い英国のFTSE100種総合株価指数は、米国株の指数に比べると底堅く推移している(下図参照)。
また、日中の相場変動も激しい。
例えば1月24日のニューヨーク株式市場は急落して始まり、その後、下げ足を速めた。ナスダック総合指数は一時、ほぼ5%安くなる場面があった。
だがその後、相場は突然上昇に転じ、ナスダックは結局、前日比0.6%高で引けた。
翌25日には再び、株価が下げた。
そして26日には、FRBのジェローム・パウエル議長が記者会見を開く前にS&P500種株価指数が大きく上昇していた。議長が話し終えた頃には、前日比で下落に転じていた。
このような分単位の相場変動の背景には、いくらか将来のことを考えている市場の存在がある。何か楽しいことでも待っているのだろうか。
いや、どうやらそれは、数え切れないほどの悪材料であるようだ。