宮田:はい。さらに食の楽しさというのは、栄養素だけでなく、誰と食べるかも大事です。
家族の大切にしていた思い出の料理だったり、あるいは新しく会う人とそれぞれのルーツを持たせて会話が弾む料理を提供したり。個人個人のデータを活用することで色々な食にまつわる楽しさ、体験価値を高めていくことが可能です。そこには美味しさ、共に食べるという体験、あるいは地域の歴史に敬意を払いながら感動することなども含まれます。
そうした体験を、その時々の状況と響き合わせながら作ってくということが、いずれ必ず実現すると思います。願わくはそれが、こういった食文化を作ってきた日本の人のイニシアチブであってほしいなと思います。
データで繋がる食と健康の未来
楠本:食を知財化したり、データの活用によってパーソナライズされた商品としてブラッシュアップしたり、それから医食同源、未病の分野でも、日本が世界をリードできるかもしれませんね。
宮田:そうですね。日本は健康寿命が非常に長い国です。健康なシニアの方々もたくさんいます。その中で、個々人に合わせた豊かな食を楽しみながら健康を作っていくこと。その健康予防という分野に、日本の可能性があります。
楠本:食のデータ活用と未病分野への貢献、それらを実現するための知財化など、いわゆるデータバンク機能のようなものが必要ですよね。それらは今後、どのようなプラットフォームやプレイヤーが役割を担っていくと思われますか?
宮田:健康の部分、とくに治療に関して言うと、実は、既にデータは繋がっています。とくに日本は、健康なときから健診のデータをとっている、数少ない国です。海外は病気になってからしかデータを取っていません。
例えば体重から血液データまで、様々な指標を年単位で計測しています。これは国が整備したもので、2021年の秋から健康データにアクセスできるようになっています。加えて、過去にどういう治療を受けたのかもデータ化されています。

楠本:それは民間企業でもアクセスできるのですか?
宮田:既にあるデータなので、本人の同意を取りながら行政と連携すれば可能です。