楠本修二郎氏と山田早輝子氏。

注目の新刊『おいしい経済』を上梓した楠本修二郎氏は、2000年代初頭からワイアードカフェなど地域に溶け込むカフェをつくってきた。楠本氏が本書で主張するのは、食品ロスや温暖化といった社会課題の解決と、経済成長を両輪で回すために必要なビジョンである。

では具体的にどう考え、取り組む必要があるのか。楠本修二郎氏が注目する実業家であり株式会社フードロスバンク代表取締役社長の山田早輝子氏に聞く。(全3回の第2回)
 

第1回はこちら:「SDGs」が世界の富裕層にアプローチするべき根拠
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68019

文・山中勇樹、写真・松橋晶子

食品ロスを軸とした3つの柱

――「フードロスバンク」と聞くと食品ロスが中心かと思いましたが、昨今話題の「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」全般にわたる発信をされているのですね。

山田 そうですね。たとえば、ホテルやレストランのブランディング、「WWF(ワールドフードフォーラム)」、あるいは世界のベストレストラン50の公式大使など、多方面の活動にも従事しています。それらは必ずしも食やフードロスに直接関係しているとは限りませんが、気付きを与えることはできます。押し付けではなく、小さなきっかけを提供することが大きな貢献につながります。

重要なことは、これらに通底するサイクルを見えるようにすることです。

誰かが自分のために何かをしてくれたら「お礼をしなくちゃ」と思いますよね。近い距離なら「してくれたこと」がすぐ分かるのですが、遠い国のことだとなかなか意識できません。
それらを見えるようにし、食を通じてサーキュレーションすることで自分に還ってくる。そのようなシステムをつくっているのがフードロスバンクです。

つまり、フードロスに関する活動が中心にあり、そこから派生してサステナビリティにつながればいいなと思っています。

楠本 「見えるようにする」というのはすごく大事で、たとえばダイバーシティの議論や啓発をしようと講演会などをしても、そこに集まる人の大半が「スーツを着たおじさん」だったりします。

また議論をしようとしても対立軸が生じてしまいがちです。日本人同士で競い合っても仕方がないのに。

そうではなく、自分ごとになる基準が必要になる。ダイバーシティを感じやすい、対立しない。そこに「おいしい」を持ってくるのはとても有効だと思っています。